
思春期外来の心療鍼灸
英語
Adolescent outpatient psychotherapy acupuncture
思春期外来の心療鍼灸、思春期の不調に効くツボまで詳しく解説
もくじ
執筆者

思春期と思春期外来
中学生や高校生、最近では小学生の不登校や引きこもりが社会問題となってから一向に減らないばかりか、社会的地位を得るほどになっている傾向があります。
さまざまな症状を訴えて心療内科、精神科、脳神経外科などを受診する思春期外来患者の数は増加している印象すらあります。
多くの子供達がある種の病気と診断され、言われるがまま、延々と薬を飲み続ける姿は、数十年前には考えられない光景ではないでしょうか。
最近の世界保健機関(World Health Organization:WHO)の発表によると、思春期障害の第3位がうつ病です。
15歳から19歳の思春期後半の死因の第3位が自殺であるという報告があります。
思春期は子供から大人へ移行する変換期間で、心身の急激な変化から、ホルモンバランスや自律神経が乱れやすく、心が大きく動揺する時期でもあります。
思春期患者の診断や治療におきましては、思春期の特徴を十分に理解し、心身両面からアプローチすることがきわめて重要だと考えます。

子供への長期間の薬物治療の懸念
思春期外来での長期の薬物治療については慎重な検討が必要です。
特に思春期は身体や脳が大きく成長、発達する時期であり、薬物の影響を受けやすいからです。
一部の薬物には、副作用として発育への影響や、情緒や行動への変化が懸念されるものもあります。
心療内科で処方される抗うつ薬、抗不安薬、ADHDの治療薬などは、長期使用による影響を慎重に観察する必要があります。

ご存知ですか?薬の認可
ご存知ですか?
普段、病院で処方されている、多くの認可された薬物は、長期間にわたる子供への使用の影響についての臨床試験データが取れないまま認可され使用されています。
思春期や発達期の子供に対する長期的な影響を評価する試験は、倫理的な問題や研究の難しさから実施が困難だからです。
エビデンスの不足:
多くの薬が短期間の使用に関しては比較的安全性が確認されているものの、発育期の子供が長期間使用した場合の影響についてのデータは不足していて、現在の治療をもとに論文が書かれていることがあります。
長期影響への懸念:
神経系や内分泌系などが発達している段階で薬物を長期間使用することで、10年後、20年後に予測できない副作用が出る可能性が懸念されます。
大人はこれらの事実を知った上で薬物治療を選択するか否かを選択してあげなければなりません。

思春期とは
思春期とは「性機能の発育(乳房発育や恥毛発育など)に始まって、初経を経て、第二次性徴の完成と月経周期がほぼ順調になるまでの期間」と日本産婦人科学会では定義されています。
現在の日本人の場合、平均的には8歳、9歳ぐらいから17歳18歳ぐらいの間とされています。
WHOの思春期の定義では「10歳から19歳の間の人」と定義されています。
思春期は、二次性徴の始まる時期から、成人へ移行する間の時期といえます。

思春期の身体面
思春期は大きく分けると二つの身体の変化①二次性徴と②成長スパートに直面します。
①二次性徴
男子は陰茎、睾丸、恥毛により評価されます。まず睾丸の増大が始まり、その後に陰茎が増大し、恥毛が発育します。
女子においては乳房と恥毛により評価されます。まず乳房の発育が始まり、恥毛が発育します。
二次性徴は視床下部、下垂体、性腺軸の内分泌ホルモンにより調節されています。
視下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)の刺数によって、下垂体前薬から性腺刺数ホルモンである黄体形成ホルモン
(luteinizing hormone:LH)と卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone : FSH)が分泌されます。
男子は精巣から主にテストステロンが、女子は卵巣から主にエストロゲンが分泌されて二次性徴が進みます。
これにより、男子は声変わりを、女子は初経を経験します。
②成長スパート(成長急伸)
下垂体前薬からの成長ホルモン(growth hormone:GH)の分泌が増大することで、
女子は10歳から12歳ぐらいの2年間で身長が急速に伸びて、17歳ぐらいで最終身長に到達します。
男子は11歳から14歳ぐらいに急速に身長が伸びて19歳ぐらいで最終身長に到達します。
思春期の心理面
2024年の厚生労働省の発表では、日本の小中高生の自殺者数は過去最高になりました。
これまで薬で押さえつけて自殺者数を減らして良しとしてきた対症療法の限界・警鐘ではないでしょうか。
精神疾患の多くはこの時期に発症することが報告されているため、思春期には身体の変化とともに、心の変化が生じていると考えられます。
心の変化は臨床心理学の観点から、身体像の変化・人間関係の変容・自己像の確立の3点にまとめられています。
自我同一性の確立
エリクソンは思春期は自分が自分であるということ「自我同一性の確立」が次第に確立されていく時期であるといしてます。
気づきはじめた自己像はまだ不安定で、他者からの評価に敏感で影響を受けやすく揺れ動きやすい。
自己像に混乱が生じ持続すると対人不安や非行の要因となり、うつ、心身症、神経症などの疾患の発症と大きく関わることが考えられています。
身体像の変化・人間関係の変容・自己像の確立
思春期にはそれぞれの段階で、身体像の変化とともに自己像は変化していきます。
①
第1期~第2期頃には身体の変化が始まり。自分自身に対する関心が高まっていきます。
他者への関心が高まる時期でもあり、少しづつ親と離れていくことについては不安や葛藤が生じます。
②
第3期~第5期頃には、自分自身の身体の変化を受け入れ始めます。
他者との関わりがさらに重要視されるようになり、以前ほど親に頼りきらないようになってきます。
家族との関わりにおいては摩擦や衝突が生じやすい時期です。
③
第5期頃は、身体的には成人と同様となり、自己像はほぼ確立されます。
気分や感情も安定化していく時期です。
他者との個人的な関係や親密な関係が特に重要となり、自我同一性の重要な構成要素となります。

発達障害
身体像の変化・人間関係の変容・自己像の確立のプロセスが何らかの影響で機能できなかった場合、発達に障害をきたすことがあります。
「過保護、過干渉、親の意見が絶対」などの(ガンジガラメ)環境では問題を生じる傾向があります。
「無保護、無関心、子のわがまま放題」の(ホッタラカシ)環境でも問題を生じる傾向があります。
発達障害があると、社会との関わりが増える思春期に不適応が顕著となる場合があります。
自分自身の身体の変化を受け入れられずに、過剰なダイエットや過食で、摂食障害、うつ、自律神経失調症などを発症しやすくなります。
思春期特有の「私は誰で」「なぜ私はここにいるのか」といった悩み、心の内の動揺や精神的な苦痛を感じる段階のまま自己像の確立ができない状態がつづいてしまいます。
SNSやWebなどの情報が、性、暴力、薬物などを過剰に、偏って取り上げることで、自我同一性の感覚に大きな影響を及ぼします。

心身相関
思春期には劇的な内分泌ホルモンの変化が生じて身体の変化が生じることで、経験のない心身の戸惑いが生じます。
これは病気ではなく、だれにでも起こりうる生理現象です。
親との距離感の変化や友人などの他者との関わりが変化し、社会との関わりが変化するため、心理社会的な負荷が増大します。
思春期はこれまで経験したことのないストレスを生じやすいため、抑うつや不安などの精神症状を生じやすく、動悸、過呼吸、不眠といった身体的な症状を生じやすいのです。
これをいかに周りの大人たちが理解、支援して、成長を促してあげる手助けを、自然な流れでできるかどうかが大切になります。
それに気づかぬまま、病気としてレッテルを張り、問題を棚上げしたまま、延々と薬物で症状を抑え込むことで、果たして問題は解決されるのでしょうか。
数年後、成人して、何らかのストレス負荷が加わった時、再発するケースは少なくありません。
思春期の病態を考えるうえでは、身体から心理、心から身体の心身一如の考察が重要です。

思春期外来の症状
身体症状
全身倦怠感
発熱
頭痛
意識障害
るいそう
食欲低下
吐き気
燕下困難
嗚咽
嘔吐
腹痛
下痢
便秘
呼吸困難
筋肉痛
腰痛
痺れ(しびれ)
など身体のさまざまな症状が生じえます。
心理症状
抑うつ
不安
不眠
緊張
過敏
アパシー(無気力状態)
非行
引きこもり
などのさまざまな心理的症状が生じえます。

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思春期外来の主な疾患
器質的疾患:胃炎、気管支喘息、胃十二指陽潰瘍、アカラシア
など
機能的疾患:過敏性腸症候群、緊張型頭痛、自律神経失調症、機能性胃腸症、心因性発熱、慢性疲労症候群
など
精神疾患:気分障害、不安障害、摂食障害(神経性やせ症、神経性過食症、回避制限性食物摂取症)、発達障害、うつ病、躁鬱病、統合失調症
など
思春期外来の心療鍼灸で使用する経絡・経穴(ツボ)の例
鍼灸や指圧治療として
百会
身柱
肺兪
厥陰兪
腎兪
中脘
膻中
天突
大巨
足三里
神門
など
※市販の「お灸」をする時の参考としても使用できます。

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参考文献
思春期,内科外来に迷い込む
國松 淳和 (著), 尾久 守侑 (著)
中外医学社
2022/1/24発売
毒親に育てられました2 多感な思春期に毒母と暮らして 自己肯定感ゼロの少女になりました
つつみ (著)
KADOKAWA
2021/6/30発売
親といるとなぜか苦しい: 「親という呪い」から自由になる方法
リンジー・C・ギブソン (著), 岡田尊司 (監修), 岩田佳代子 (翻訳)
東洋経済新報社
2023/5/24発売
関連外部リンク
Adolescent Intensive Outpatient Program
Massachusetts Center for Adolescent Wellness
Adolescent Intensive Outpatient Program
Vermilion Behavioral Health Systems
Adolescent and Child Outpatient Mental Health Services
Denver Health