カサンドラ症候群

英語

Cassandra syndrome

・カサンドラ症候群とは

・カサンドラ症候群の由来

執筆者

井出貴之（鍼灸師）プロフィール

カサンドラ症候群とは

カサンドラ症候群は、親、兄弟、配偶者、同僚、上司、先生などの身近にいる人が自閉症やアスペルガー症候群を含む、自閉スペクトラム症（ASD）のために、適切な意思疎通が難しく、良好な関係性を築けないために、

そのストレスから不安や抑うつなどの症状が起きている状態をいいます。

カサンドラ症候群は、病院の診断基準には記載がなく、正式な疾患名ではありません。

カサンドラ症候群は、カサンドラ情動剥奪障害やカサンドラ状態などとよばれることもあります。

カサンドラ症候群は、アスペルガー症候群の診断を受けていなくても、アスペルガー症候群の傾向を持っているグレーゾーンの方の身近にいる人でも起こり得る状態だと考えられています。

カサンドラ症候群の由来

カサンドラの由来は、ギリシャ神話のトロイの王女の名前です。

カサンドラは神話の中で、予知能力がありましたが、太陽神アポロンの愛を拒否したことで、アポロンからの怒りを受けて「誰からもその予知能力を信じてもらえないように」呪いをかけられました。

カサンドラ症候群は、「身近な人との関係性に困難を感じていても、なかなか周りから理解してもらえない状態」と

「誰からも予知能力を信じてもらえないカサンドラの置かれた状態」を重ねて、

心理療法家シャピラによって1980年代に名付けられました。

カサンドラ症候群の原因

「家族として自閉スペクトラム症（ASD）の方と常に接することで生じる心的ストレスの積み重ね」

「理解されない苦しみが周りに理解されないまま孤立する事」

自閉スペクトラム症（ASD）の方の特徴

周りとのコミュニケーションが困難

相手の気持ちを考えることが困難

場の空気を読むことが困難

会話中に思わず不適切な表現をする

物事へ強いこだわり
　
興味を持ったものに対しては、時間を忘れるほど集中的に熱中する。

興味のないものに対して実行することに困難や苦痛を感じる。

日常生活での行動や習慣についてパターン（ルーティン）化しやすい。

いつもと違うパターンの行動に困難や苦痛を感じる。

カサンドラ症候群の方の状態

自閉スペクトラム症（ASD）の方が身近にいる方の状態（カサンドラ症候群）

コミュニケーション不足、もしくは、うまく取れない。

常に心理的ストレスを抱えた状態。

周囲の人に相談しても、なかなか理解が得られない。

悩みを一人で抱えやすい。

精神的な負担が一生続くような思い。

結果

不安障害や抑うつ症状

カサンドラ症候群の人が抱えうる問題

体調の不安がつづく

人間不信

人付き合いがうまくいかない

働いても長く続かない

常に不安
　
学校に行かなければならないと、わかってはいるが行けない。

職場に行かなければならないと、わかってはいるが行けない。

引きこもり

カサンドラ症候群の3つの要点

心理療法家マクシーン、アストン（英）のカサンドラ症候群の3つの要点。

①パートナーにASD特性などによる、共感性や情緒的表現の障害がある。

②パートナーとの関係において情緒的交流の乏しさが原因の激しい対立関係、精神的、身体的虐待、人間関係の満足度低下がある。

③精神的、身体的な不調がある

【精神的、身体的な不調】

抑うつ状態

不安障害

罪悪感

自己評価の低下

不眠症

PTSD

体重増減

片頭痛

めまい

パニック障害

無気力

易疲労感

自律神経失調症

カサンドラ症候群になりやすいのはどんな人？

真面目

几帳面

完璧主義

忍耐強い

面倒見がいい　

曲がったことが嫌い

純粋

発達障害やグレーゾーンの家族や身近な人に対して、真正面に向き合おうと努力して、悩み、我慢してコミュニケーションを頑張る。

怒ったり避けたりせずに我慢し受け入れようとする忍耐強さが続き、

本人の許容範囲の閾値を超えたとき、カサンドラ症候群の症状が現れ始めることになります。

カサンドラ・チルドレン

アスペルガー症候群は男性に多いため、多くは妻がカサンドラ症候群になってしまうことは知られていますが、

アスペルガー症候群やそのグレゾーンの方は女性にも見られます。

母親がアスペルガー症候群や、診断を受けていないアスペルガーグレゾーンの方の場合、

その子供は幼少期から、カサンドラ症候群を患っている場合があります。

そのような環境で育った子供は、幼少期から心理的、身体的にさまざまな症状を抱えて、

人間不信に陥り、「不登校」や「引きこもり」につながる事も考えられます。

不登校や引きこもりになる事で、家庭内での関係が濃密になる事で、さらにカサンドラ症候群の状態が悪化、慢性化するという悪循環が懸念されます。

そうでなければグレて家出したり、誰にも理解されないという苦しみから、社会や他人を憎み、社会的問題行動を起こしたり…

これらを私はカサンドラ・チルドレンと呼んでいます。

そして、今、カサンドラチルドレンは増えています。