パニック障害と合併しやすい病気
英語
Illnesses that tend to coexist with panic disorder
パニック障害と合併しやすい病気
うつ病
不眠症
アルコール依存症
過呼吸症候群 (過換気症候群)
過敏性腸症候群
僧帽弁逸脱症、僧帽弁閉鎖不全性
うつ病
パニック障害はうつ病を合併することが多く、その併存率は50%以上であると言われています。
パニック障害の症状である動悸、過呼吸、めまい、突然の不安などに悩まされていると、健康的なリズムのある生活を送ることが困難になるため、気持ちが落ち込みます。
意欲の低下、不眠、食欲低下、罪責感、自殺念慮、妄想、などの症状に発展してしまうケースは稀ではありません。
うつ病
不眠症
パニック障害は不眠症を合併することが多いです。
パニック障害の症状である動悸、過呼吸、めまい、突然の不安などは、交感神経が優位になった状態なので、興奮状態が続くため、なかなか眠りにつけません。
死の恐怖により、「寝ている間に死んでしまったらどうしよう」という不安と恐怖が襲い、とても眠れません。
何日間も眠れない状況が続き、目の下が黒くなってくることもあります。
生活リズムが狂い、生理的バランスが崩れ、頭痛や、便秘、などの症状も現れます。
少し眠れても、悪夢を見て目が覚めたりと、体力を非常に消耗するので、疲れます。
不眠症
アルコール依存症
パニック障害の辛い症状を紛らわしたり、不眠を解消するためにアルコールを常用し、中毒になってしまうケースがあります。
アルコールは、短期的に、副交感神経を刺激して、リラックスさせてくれますが、その後アルコールが分解されると、アセトアルデヒドという毒性のある有害物質にかわり、こんどは、交感神経を刺激し、動悸や吐き気、頭痛を起こす原因となります。
睡眠も浅くなりるので、熟睡できず、睡眠を取ったつもりでも疲れが取れないといった現象が起こります。
アルコールには、依存性があるため、アルコール中毒に陥ると、なかなか抜け出すことが難しくなります。
過呼吸症候群 (過換気症候群)
過呼吸症候群は、長期間にわたるストレスにより、胸に圧迫感を覚えたり、息が苦しくなり、空気が足りないと言う感覚に陥る、心身症の1つです。
空気が足りない、このままでは窒息してしまう、と言う感覚に陥り、それを補おうとして、過激に息を吸ったり吐いたりする行為が繰り返されます。
過激に息を吸ったり吐いたりを繰り返すと、血液中の酸素濃度が上がり、二酸化炭素濃度が下がります。
肺から取り入れた酸素は、血液中のヘモグロビンと結びつき、全身の細胞に送られますが、そこから細胞への酸素の引き渡しには、二酸化炭素が必要になります。
二酸化炭素濃度が低下した血液では、細胞への酸素の引き渡しができなくなってしまうので、酸欠状態に陥ってしまいます。
さらに、血液中の二酸化炭素が減少すると、血管が収縮します。
このことにより、しびれ、めまい、筋緊張、だるさなどの症状が起こります。
過換気症候群
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群
IBS (Irritable bowel syndrome)
過敏性腸症候群は、腸管の機能疾患で、腹痛を伴ったり、便通異常が続いたり、様々な腹部症状を訴えるが、これらの症状を説明できる、器質的病変が腸管に見つからない疾患です。
心身症の1つで、ストレスや性格の関与が大きいと考えられています。
思春期の女性や、働き盛りの男性などで、ストレスや情動的動揺をきっかけに、腹痛、下痢、便秘、交代制便通異常などの症状を伴います。
その他、倦怠感、不安、不眠、頭痛、頻尿、発汗、動悸などを伴いいます。
消化器科、胃腸科を受診する患者の約50%が過敏性腸症候群であると言われています。
過敏性腸症候群の腹痛の兆候は、①便通により軽快する、②頻度が年6回以上ある。③1回の持続時間が3週間以上続く。
過敏性腸症候群
僧帽弁逸脱症、僧帽弁閉鎖不全性
僧帽弁逸脱症、僧帽弁閉鎖不全性
心エコーの映像技術の進歩に伴い、たくさん発見されるようになりました。
定期検診で心音に雑音があり発覚することがあります。
心音は、I音低下と、III音の増幅があり、新鮮分で、前収縮期逆流性雑音があります。
心臓の左心室と左心房の間にある弁がしっかりと閉まらないため、心臓内で血液が逆流してしまう疾患です。
ほぼ無症状です。
人によっては動悸や息切れなどが伴うことがあります。
ほとんどが先天性で、軽度のものは無症状です。
重症僧帽弁逸脱症でも、無症状であれば経過観察となるのが、一般的です。
僧帽弁逸脱症は、賛否両論があります。
経験のない医師や専門外の医師の検診では聴診でスルーしてしまうこともあります。
僧帽弁逸脱症の知識の少ない内科などで発見された場合、狭心症などと同じような感覚でとらえられ、専門病院に送られます、
循環器内科では、よくある疾患として扱われ、重症でも、息切れ、不整脈などがなければ、定期的な検査(心エコー、心電図)で様子をみるのが一般的です。
心臓外科では、先ず手術を勧められることが多いです。
内科の医師によっては、心身症の一種と捉えている方もおられます。
もともと先天性のものがほとんどのため、重症僧帽弁逸脱症でも手術をせずに経過観察をするだけでも、僧帽弁逸脱症でない人の寿命と比べて、大差は無いと言う論文も存在します。
頻脈や息苦しさ、不整脈などが頻繁に起きるようになった場合は手術を考慮しますが、
僧帽弁逸脱症は、自律神経失調症の一種であるので経過観察のみで大丈夫と唱える医学者も存在します。
ただ、パニック障害の症状(動悸や窒息感)を僧帽弁逸脱症の器質的な疾患の症状と勘違いしてしまうこともあるので、その見極めが大切ですが、そこまで考慮してくれる医療機関はなかなか無いと思うので注意が必要です。
というのも、循環器内科も心臓外科も精神科も医療が分散化されてしまっていて、横のつながりが薄い傾向があるからです。
ですので、「僧帽弁逸脱症の器質的な疾患でドキドキして息切れしている」のか、
僧帽弁逸脱症なのだけれど、「パニック障害でドキドキして息切れしている」のか
をはっきりさせないと、「パニック障害でドキドキして息切れしている」のに、本当は手術の必要がないのに、
僧帽弁逸脱症の器質的な疾患に限界がきてドキドキしていると勘違いされて手術に進んでしまうことも無きにしも非ずです。
一昔前の手術は、人工弁置換術が一般的でした。
人工弁置換術は、異物を体内に入れ込むため、ワーファリンなどの薬を一生涯飲み続ける問題がありました。
現在では、弁の状態にもよりますが、僧帽弁形成術の進歩により、少ない侵害刺激で手術することが可能になり、術後の薬も必要なくなりました。
ただ、前述した通り、僧帽弁逸脱症は先天的なものがほとんどで、逆流の部分だけ見れば恐ろしく思え、
現代医学では心臓疾患の枠組みに入れられてしまっていますが、
この弁が逆流することにより全体のバランスを保っていると言う考え方もできなくは無いと考えます。
ですので、手術が成功しても、また数年後にはもとの逆流が発生する症例が多数あります。
重症僧帽弁逸脱症と言う診断名がつくと、自分はとても恐ろしい病気にかかり、いつ心臓が止まってもおかしくないのではないかと言う感情に見舞われることがあります。
問題は医師よって見解がまちまちなので、患者は何を信じたらいいのか分からなくなり、混乱します。
命に関わる場所だけに恐ろしく不安になって当然です。
この恐怖心はパニック症状を増幅します。
診断を下される前は、いたって正常に、普通に、当たり前に、何の心配も必要なく暮らしていたにもかかわらずです。
診断自体がパニック症状を引き起こす引き金にもなりえるのです。
また、僧帽弁形成術の手術を早めに受けた方がいいのかどうかも現代医学では答えが出ていません。
ただ、手術には全身麻酔と人工心肺装置を使うので、とても体力が必要になります。
このため、医師によっては早めの手術を進める傾向があります。
「今の状態ではまだ形成術が可能なので、今のうちに手術しておいてはどうですか?」
「後々状態が悪化すると、形成術ではなく人工弁になる可能性もあります」
「そうなると障害者一級になってクスリが手放せません」
「体力の問題もあります」といった具合です。
もしあなたが、僧帽弁逸脱症と診断されて、パニック発作を起こし、ご自分の状況を誰からも理解されていない気がして、自分でもよく分からず、心細く感じているのであれば、
少しのお手伝いが出来るかもしれません。
パニック障害
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参考文献
薬なし、自分で治すパニック障害
(著)森下 克也
KADOKAWA
2014年03月27日発行
患者のための最新医学 パニック障害 正しい知識とケア
(著)坪井 康次 (著, 監修)
高橋書店
2021年05月19日発行
パニック障害と合併しやすい病気 関連外部リンク
パニック障害とうつ病は併発しやすい?2つの病気の関係について
神楽坂こころのクリニック
関連外部リンク
Anxiety Disorders and General Medical Conditions: Current Research and Future Directions
National Library of Medicine
Anxiety Disorders and Panic Attacks
The University of Michigan
Anxiety Disorders - Facts & Statistics
Anxiety Disorders Association of America