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経絡・経穴(ツボ)

至陰(しいん)

至陰 ——「終わりは始まり。陰の底から陽が生まれる」

小さな爪のきわ、静かな陰の入口に、

気の流れが眠り、目覚める。

それは、最も静かで、最も力強い変化の兆し。

英語
Bladder(BL)67
Zhi Yin(Reaching Yin)

至陰(しいん)(井金穴)

足の太陽膀胱経67
The Bladder Meridian of Foot-Taiyang

至陰
しいん
shiin

取穴部位
足の第5趾(小指)外側の爪の根元、爪の角から約1分(約3mm)外側にある極めて繊細なポイント。
爪の外縁と皮膚の際にあることから、微細な変化をキャッチしやすい“起点のような”感覚がある。

筋肉
なし(皮下組織)

運動神経
なし(筋肉なし)

知覚神経
外側足背皮神経(浅腓骨神経の枝)

血管
外側足底動脈の細枝

足の太陽膀胱経

主治(臨床応用)
・胎位異常(逆子)の矯正(伝統的に灸で用いられる)
・頭痛、特に後頭部・項部の重だるさ
・目の充血、目の奥の痛み、視界の歪み
・意識障害、気絶、ヒステリー的興奮(応急処置的にも)
・冷え症(特に末端冷え性)、不眠、悪夢

名前の由来(オリジナル解釈)
「至陰」とは「陰の極みに至る」という意味。
これは単に「陰の終点」という意味だけではなく、
**“陰の完成点”であり、新たな陽への転換点”**を象徴する。

▶ 五臓六腑のエネルギー循環において、
 ここから「陽」が再び立ち上がるという“陰陽交替の鍵穴”。

古代中国では、冬至が「陰の極みであり陽の生まれる時」とされたように、
このツボもまた「終わりではなく始まり」を意味する。

五行分類と象徴性
井金穴として、五行の「金」に属する。
金は「浄化」「切り替え」「決断」「呼吸」の性質を持つ。

▶ 至陰は、心身の“古い情報”や“不要なエネルギー”を断ち切り、
 新たな流れを生み出す“リセットのスイッチ”のような存在。

象徴的イメージ(オリジナル比喩)
至陰は、
・“夜明け前の静寂”
・“一滴の水が岩を穿つ始まり”
・“冬の底で春を感じ始める瞬間”
のようなエネルギー。

「小さな指の小さな点」に、宇宙の転換のリズムが宿っている。

臨床での活用(実践ポイント)
・逆子 → 妊娠32〜36週頃に、至陰にお灸を1日1回。左右ともに。温かさを感じる程度に(専門家の指導推奨)
・頭ののぼせ → 至陰を軽く爪楊枝の背や綿棒で刺激。後頭部がふわっと抜けるような軽さが出ることがある
・悪夢・寝つきが悪い → 寝る前に足湯→至陰に爪でトントン軽く刺激+深呼吸

感情と精神への応用
・緊張しやすく、心が切り替わらないタイプに
・過去のことを引きずりやすい人が“終わらせて次へ進む”助けに
・「もう一度やり直したい」と願うときの再出発のスイッチとして

関連経穴との関係
・足通谷(榮水穴)→束骨(兪木穴)→京骨→申脈→至陰と経絡が流れる中で、
至陰は「出発点」であると同時に「すべてが戻る場所」でもある。

▶ 頭痛の治療でも、あえて末端の至陰を使うことで、
“末端からの気の変化”によって上部の滞りをゆるやかに溶かすことが可能。

→睛明(せいめい)

←足通谷(あしのつうこく)

→足の少陰腎経

←手の太陽小腸経

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