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経絡・経穴(ツボ)

膈兪(かくゆ)

「膈兪」は、“泣きたくても泣けなかった感情”が沈殿する場所でもあります。

感情と血は同じ“流れるもの”。それが滞れば、身体も心も冷えていく。

― 背中で泣けるようになったとき、人は一歩、前へ進めるのです。

英語
Bladder(BL)17
Ge Shu(Diaphragm Shu)

膈兪(かくゆ)<血会>

足の太陽膀胱経17
The Bladder Meridian of Foot-Taiyang

膈兪
かくゆ
kakuyu

取穴部位
第7・第8胸椎突起間の外1寸5分(約3cm)
肩甲骨下角よりやや下に位置し、背骨に沿った「内膀胱線」上。
深い呼吸により僧帽筋の起伏が明確になり、触診しやすくなる。
呼気時に圧痛が現れやすいのが特徴。

筋肉
僧帽筋(中部〜下部繊維)

運動神経
副神経、頚神経叢筋枝

知覚神経
胸神経後枝(T7〜T8)

血管
肋間動脈

足の太陽膀胱経

主治
・横隔膜の緊張、呼吸の浅さ
・胃のつかえ、食欲不振、ゲップ、胃酸過多
・貧血、皮膚の乾燥、顔色の悪さ(血虚証)
・自律神経の乱れによる胸中の不快感
・血流停滞による冷え・月経不順・瘀血性疼痛(例:生理痛)

名前の由来(オリジナル解釈)
「膈(かく)」は横隔膜を意味し、「兪」は通じる・放つの意。
すなわち「**横隔膜の気血の出入り口**」がこの膈兪であり、
**身体の上半身と下半身を隔てる“境界”のエネルギー転換点**である。
このツボは、“感情・呼吸・血液循環”が交差する場所であり、
特に「抑え込んだ感情」が血流や呼吸を滞らせると、ここに症状が現れる。

中医学的意義
・膈兪は「血会(けつえ)」という、血を司る特別な会穴。
・心と肝、そして脾との連携の中継点として、
 **「感情(肝)→気(心)→血(脾)」の循環バランスを整える要点**でもある。
・特に肝鬱化火や瘀血により起こる上焦の異常(不安、胸苦しさ、怒り)に有効。

現代的応用
・ストレスによって食欲が落ちる、あるいは過食になる人
・マインドフルネスなど深い呼吸法がうまくいかないときのサポート
・肩甲骨周囲が固まって呼吸が浅く、イライラが抜けないタイプ
・情緒的トラウマが原因で“胸にしこり”のような違和感がある人

精神・スピリチュアル的意味
・膈兪は、文字通り「気と血、心と身体の境界線」。
 ここに滞りがあると、“感情を理屈で押さえ込む”傾向が生まれやすい。
・怒り・悲しみ・恐れなどの未消化感情が「胸の奥で詰まっている」と感じたとき、
 **膈兪がその“通訳者”となり、感情の言葉を身体から外に解き放つ**。
・自分の「許せなかったこと」「言えなかったこと」を昇華させるための出口がここにある。

臨床での応用例
・膈兪 + 肝兪 → 怒り・抑うつ・月経不順・慢性頭痛に
・膈兪 + 心兪 → 胸のつかえ、焦燥感、不整脈的な動悸に
・膈兪 + 中脘 → 胃もたれ・胃痛・食欲異常に(胃気の調整)

セルフケア・実践法
・深呼吸を意識しながら、壁にもたれてこの部分に温熱療法(温灸や温湿布)
・「胸が詰まる」と感じたら、背中側に両手を当ててゆっくり圧をかけながら吐く
・「未消化の感情をここから出す」と意識して深呼吸を続けるだけでも、胸が開いてくる

→肝兪(かんゆ)

←督兪(とくゆ)

→足の少陰腎経

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