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パニック障害のマインドフルネス・瞑想・坐禅


パニック障害のマインドフルネス・瞑想・坐禅

英語

Mindfulness/meditation/zazen

公開日:2021/07/06 | 更新日:2023/10/10

執筆者

井出井出 貴之(鍼灸師)プロフィール

パニック障害のマインドフルネス・瞑想・坐禅

マインドフルネス・瞑想・坐禅

マインドフルネスとは、今ここにある現実と自分の意識に集中し、静かに座ることをいいます。

過去の失敗や辛い経験、今後どうなるかわからない不確かな未来、湧き上がる不安や恐怖の感情をそっくりそのまま、逃げも隠れもせず、静かにそこに座り、眺めながら、深追いしようとする思いを受け流し、今座ることに集中します。

マインドフルネス瞑想では、様々な感情や考えが浮かんできて、あれやこれやとそのことについて引き込まれ考え込む、といった忙しい頭を観察して、考え込んでしまっている自分に気がついたらすぐに、「今自分は瞑想して座っている」と言うことだけに集中し、その忙しい頭を「座っていることに集中」し直します。

この繰り返しです。

瞑想する時間は、10分でも20分でも1時間でも大丈夫です。

毎日、決まった時間に、するのが大切です。

朝1回、夕方一回、寝る前に一回、など生活リズムを整えるつもりで行うのも良いでしょう。

マインドフルネス・瞑想・坐禅

マインドフルネス・瞑想・坐禅 やり方

坐禅の基本


①立ったまま自分が座る場所に一礼します。



②背筋を伸ばし、体の力を抜いて、背骨の骨組みに乗るようなつもりで座ります。

椅子に座る場合は深く腰掛けます。

床に直接座る場合は、お尻の部分だけに座布団を敷き、あぐらをかくような格好で、右足を左の太ももの上に乗せ、

坐布



左足を右の太ももの上に乗せます。

体が硬くてできない場合は、あぐらをかくような格好で、左足を右の太ももの上に乗せます。

結跏趺坐



③手はひざの上にかるく置くか、

右の手の平の指の上に左の手の指の裏を重ねて、両方の親指を合わせて、卵型の形をつくり、

おへその下あたりのところに置きます。

考え事などで心身がガチガチに固まっていると、この卵が崩れます。

また、居眠りなどで心身がフニャフニャになっても、この卵型が崩れます。

法界定印



④目は半分閉じた状態で斜め45度前の方にむけます。



⑤坐禅の基本は「整身、整息、整心」を同時に行じます。
 

「整身」は坐禅の姿勢のまま身体を前後左右に揺らして身体をほぐし、

最終的に天井と床から引っ張られるように、骨組みに乗る姿勢に落ちつきます。


「整息」は最初身体を前に揺らす時、息を口から吐き、姿勢を元に戻す時、鼻から吸います。

身体を後ろに揺らす時、また息を口から吐き、姿勢を元に戻す時、鼻から吸います。

これを、前後左右、同じように呼吸します。

最終的に天井と床から引っ張られるように、骨組みに乗る姿勢に落ちつき、呼吸が整ってきたら、鼻だけで呼吸します。


【腹式呼吸】

坐禅は腹式呼吸が基本です。

肩を動かして肺で呼吸する感覚ではなく、

おへその下で呼吸をするイメージです。


「整心」は整身と整息をすることで自然と整っていきます。

(その逆も然りです)



⑥座っている途中、様々な考えが浮かんできますが、ただ静かに眺めるだけで、考えを追ってあれやこれやと考え込むのを避けます。

あれやこれやと考えこんで、「あれをしわすれていた」と立ち上がったり、スマホをいじってしまったりするとNGです。

これは「乱心→乱息→乱身」の方向性です。

あたまに振り回された結果、呼吸が乱れ、「乱身」が過ぎれば病気の症状として表れます。


電子機器の電源はできるだけオフで、静かな環境でおこないます。



⑦途中考え込んでしまっている自分(あたまに振り回されている自分)に気づいたらすぐに最初の「整身、整息、整心」を行じます。



⑧基本的には「一炷(いっちゅう)※」坐り終わったら、立ち上がって、坐っていたところに一礼します。

※一炷とはお香一本が燃え尽きる時間、40分程度ですが、これといった決まりはありません。



⑨その後、呼吸を整えながら、胸を張って、アゴを引いて、静かに数分ゆっくりと歩きます。歩くのは室内でも屋外でも構いません。歩いているときも「整身、整息、整心」を意識します。



⑩以上を時間がゆるせば繰り返します。



この坐りを基本にすることで自然と日常生活に応用されます。

「整身、整息、整心

Mindfulness

マインドフルネス は「今、この瞬間に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」という概念で説明されます。


このマインドフルネス瞑想の考え方は新しいものではなく、3000年以上の歴史を持つ東洋の仏教的な瞑想、坐禅を基本としたものです。

マインドフルネスの2つの流れ

①仏教本来のマインドフルネス(瞑想・坐禅)は、達成すべき特定の目標を持たずに実践されます。

真実の坐り
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②医療行為としてのマインドフルネスは、仏教本来の瞑想、坐禅から派生してアメリカで生まれたもので、特定の達成すべき目標をもって行われます。

(アンチエイジングのためなど)

マインドフルネスと呼ばれるものには、大きく以上の2つの流れがあります。

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)

医療行為としてのマインドフルネスは、禅を学んだアメリカ人分子生物学者のジョン・カバット・ジンが、1979年にマサチューセッツ大学で、心理学の注意の焦点化理論と坐禅を組み合わせ、臨床的な技法として体系化し、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)を始めたことから始まりました。


マインドフルネスストレス低減法(MBSR)という新しい精神療法の基本理念は道元禅師の禅の流れを受けています。

マインドフルネスストレス低減法

マインドフルネスの語源

もともと、マインドフルネス(mindfulness)という用語は、

仏教用語のサンマ・サティ(Samma-Sati)

「正念、正しいマインドフルネス」から来ています。

サンマ・サティは「常に落ちついた心の行動(状態)」を意味します。

サティはいくつかの仏教の伝統における重要な要素で、全てが相互につながりあって生起している(縁起)、といった認識に基づいて行動する意味を含んでいます。

マインドフルネスの語源

マインドフルネスを道具として使う

西洋には仏教的な歴史が浅く、マインドフルネスは仏教の全体的な真理とは切り離され、「心理学的なスキルの一つ」として受容され、展開してきた傾向があります。

ですので、西洋の世俗的なマインドフルネスは、「わたし」を中心に据えた自己中心的な自己修養、自己増進のためのものと理解され、実践されている傾向があります。

本来のマインドフルネスはこの「自己中心的な自己修養、自己増進のためのもの」という殻を破り、全体に溶け込む働きとしてあるものです。

本来のマインドフルネスを西洋が誤解する背景には、仏教のいう全体としての「自己」に適する言葉が無く、SELFという全体から切り離された「自分」と訳して伝わってしまっていることがあげられます。

マインドフルネスを道具として使う

豊かさゆえの悩み

2000年代に入るとアメリカでは仏教や東洋の思想実践への興味が高まり、マインドフルネス瞑想が注目されるようになりました。

物質的には豊かになったはずのアメリカ社会で、ドラック中毒、奪い合い、殺し合いが絶えない中に、何かが欠けているのではないかといった感情を抱いて坐禅を始める人々が増えています。

マインドフルネスのメジャー化

マインドフルネス瞑想は、心理的・身体的健康、良好な人間関係、的確な意思決定、仕事・学業成就、生活の向上などに効果があるとして注目されています。

2016年後半にApple社の「iPhone」にヘルスケアアプリ「マインドフルネス」のカテゴリが追加され、急速に一般化してきています。

実は、Apple社を創設したスティーブ・ジョブズも禅に傾倒した仏教徒であったといいます。

そういった流れもあり、マインドフルネスの名称を利用し、本来のマインドフルネスとはかけ離れたマインドフルネスビジネスも生まれています。

マインドフルネスの社会利用

マインドフルネスに基づく医学的な介入は、うつ病や不安などの心配を減らすのに有効であるという複数の研究結果が示されています。

現在米国において、マインドフルネス瞑想のプログラムは、学校、病院、刑務所、福祉施設などにも広く採用されています。

マインドフルネスのプログラムは、健康的な老化や周産期への介入、特別なニーズをもつ子供への支援などにも適用されています。

マインドフルネスの瞑想エクササイズ

マインドフルネス瞑想は、今現在に注意を向ける能力を発達させることを目的としています。

マインドフルネス瞑想をするためにデザインされた瞑想エクササイズには様々なものがあります。

呼吸に集中する方法

椅子に座るか、床やクッションの上に脚を組んで座り、目を閉じて、呼吸の感覚に注意を向けるという方法があります。

その際に注意を向ける対象は、鼻孔の近くでの呼吸の感覚か、腹部の動きです。

呼吸をコントロールしようとせず、自分の自然な呼吸のリズムにただ気づきます。

この時、心が、他の考えや連想へと流れていくことがよく起こります。

それが起こった場合は注意が散漫になっているということに気づき、注意を呼吸へ戻します。

ボディスキャン瞑想

ボディスキャン瞑想は、身体の様々な場所に注意を向けて、その時に起こっている身体の感覚に気づきます。

例えば、ヨガもボディスキャン瞑想の一つです。身体の動きや身体感覚に注意を向けます。

さまざまなマインドフルネス

マインドフルネスには、歩く瞑想(ウォーキング・メディテーション)や、

音、感覚、思考、感情、動作などに注意を向けるものもあります。

レーズンをマインドフルに注意深く味わうマインドフルネスは、

ジョン・カバット・ジン氏がマインドフルネスストレス低減法のプログラムとして導入しました。

真実の座り

悟るため、パニック障害を克服するため、うつ病の再発を防止するため、

という自分の目的のために使う坐禅を、本来の仏教では野狐禅(やこぜん)といって戒めています。


パニックで辛いなら辛いなりに、鬱でしんどいならしんどいなりに、自分のああしたいこうしたいをデキルダケ離れて、坐禅の方に身をゆだねる(坐禅にあやつられる)方向性が本来の坐禅です。

つまり、薬のようなつもりで坐禅を使っているうちは、見た目は同じようでも、まったくもって坐禅本来の形ではないということなのです。


この根本をあやまったまま、我の内を垣間見ないまま、

坐禅で薬で病気を治して楽になろう、自分の思い通りにしようと、症状を操つろう(コントロールしよう)としているその気持ちそのものが、


病(やまい)の気なのです。


医療や瞑想ビジネスの一環として使われている世俗的なマインドフルネスと、本来の坐禅・瞑想との別れ道は根本的なところにあるのです。




たった一人でも、


損も得も手放して、


棺桶の中にいるつもりで、


今、ここで、ただ坐るのみなのです。

パニック障害 瞑想

マインドフルネスの習慣

最初は、1日に10分間程度の短い時間で瞑想を始めるよう推奨されるのが一般的なマインドフルネスです。

定期的に実践するにつれて、呼吸に向ける意識は容易になっていきます。

マインドフルネスの習慣

パニック障害

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参考文献

こころのクスリBOOKS よくわかるパニック症・広場恐怖症・PTSD
(著)貝谷 久宣(監修)
主婦の友社
2018年09月29日発行

スタンフォード大学 マインドフルネス教室
(著)スティーヴン・マーフィ重松, (翻訳) 坂井純子
講談社
2016年06月29日発行

マインドフルネス 関連外部リンク

マインドフルネス
慶應義塾大学

関連外部リンク

Mindfulness exercises
Mayo Foundation for Medical Education and Research (MFMER).

What is mindfulness? - Mind
Mind

Mindfulness
American Psychological Association