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経絡・経穴(ツボ)

尺沢(しゃくたく)

英語
Lung(LU)5
Chi Ze(Cubit Marsh)

尺沢(しゃくたく)(合水穴)

手の太陰肺経5
The Lung Meridians of Hand Taiyin

尺沢
しゃくたく
shakutaku

取穴部位
肘を軽く曲げたとき、肘窩横紋上に浮き上がる上腕二頭筋腱の橈側。
腱の外側のくぼみに取る。触診で動きやすく、明確な位置感覚を持つため初心者にも取穴しやすい部位。

筋肉
上腕二頭筋腱、上腕筋、腕橈骨筋

運動神経
筋皮神経、橈骨神経

知覚神経
外側前腕皮神経、外側上腕皮神経

血管
橈側反回動脈、浅橈側皮静脈

手の太陰肺経

主治
・急性の咳、喘息、痰の多い咽喉炎
・胸痛、息苦しさ、気道の粘り感
・肘の痛みやしびれ、腕の疲労感
・心因性の過呼吸、深呼吸がしづらい状態

名前の由来(独自解釈)
「尺」は前腕の長さや脈を意味し、「沢」は水が集まる場所。
つまり尺沢とは、「流れを受け止め、清濁を分かつ“関所”のような存在」。
肺経の水の気が集まる合水穴であり、上から流れてくる“感情・湿気・痰飲”といった気の流れを、ここで濾過・選別する役割を担う。
身体的にも、精神的にも「止まり・溜まり・分ける」ことが必要なときに使うツボ。

臨床的応用(オリジナル視点)
・風邪の引きはじめで喉がイガイガし、咳が出始めたときに、軽擦や瀉法が効果的。
・ストレスによる胸の締めつけと呼吸困難に対し、鎮静を促すように刺激すると効果あり。
・長引く咳や後鼻漏など、「気が滞留して粘っているような症状」にも対応。
・腕全体のだるさや熱感、特に肘を中心とした炎症を鎮める冷却のツボとしても働く。

感情との関係(肺と“流れの制御”)
・肺の「泣きたいのに泣けない」「吐き出したいのに言葉にならない」ような感情の淀みを、ここでいったん受け止める。
・泣いた後、スッと胸が軽くなる感覚があるように、尺沢は“涙が流れる前の最後の防波堤”とも言える。
・過剰な感情表現に疲れたとき、ここを温めると落ち着きが戻りやすい。

養生のヒント
・冷たい風に当たった後や、感情を溜め込んだ一日の終わりに、温灸や押圧で穏やかなリセットが可能。
・スポーツ後の腕の筋疲労回復にも使えるため、セルフケアにも向いている。

補足
・尺沢は「肺の出口であり、また門番のような存在」。ここを整えることで、呼吸全体のリズムが整い、全身の酸素供給がスムーズになる。
・特に「吐くことができない人」「溜め込むタイプの人」は、このツボに意識を向けるだけでも深い気づきが得られることがある。

→孔最(こうさい)

←俠白(きょうはく)

→手の陽明大腸経

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