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至陽(しよう) |

「至陽=陽の極み=限界に達した陽を鎮める」
“熱の逆流”や“精神的過剰状態”へのツボ
**精神的なバランスを取り戻す“対話の場”**
英語
Governor Vessel(GV)9
Zhi Yang(Extremity of Yang)
至陽(しよう)
奇経 督脈9
The Du Meridian (Dumaixue)
至陽
しよう
shiyo
取穴部位
第7・第8胸椎棘突起間、正中線上
背部のやや中下部、横隔膜の裏あたりに位置し、胸と腹の“境界”を整える要所
筋肉
棘上靭帯、棘間靭帯、脊柱起立筋群(特に最長筋・多裂筋)
運動神経
胸神経後枝(T7〜T8)
知覚神経
胸神経後枝
血管
第7・第8肋間動脈背枝
主治
- 背中や胸郭の緊張・痛み
- 胃もたれ、胸焼け、消化不良
- 自律神経失調(交感神経過緊張タイプ)
- 熱感、不眠、イライラなど「陽の過剰」による症状
- 呼吸の浅さ、焦燥感、情緒の高ぶり
名前の由来(オリジナル解釈)
「至陽」は文字通り「陽の極まりに至る」ことを示す。 これは単に陽気が最も集まる場所という意味ではない。 陽気が過剰になり、全身のバランスが崩れたとき――例えば、焦り、怒り、のぼせ、息苦しさといった「陽の暴走」が生じたとき、**このツボが“陽を調える限界点”として作用する**。 「至陽」は、行き過ぎた陽を制御し、心身を静かに鎮める“陽のブレーキポイント”なのである。
中医学的意義
- 陽熱を冷まし、心火を鎮める
- 胃腸の機能を調え、中焦の気の昇降を助ける
- 気逆・熱証による症状を和らげる(喉・胸・頭への熱の昇り)
象徴的な意味
- 「到達点としての陽」= 限界を知る智慧、過剰を調整する力
- 陽の本質が暴走ではなく“生命を照らす秩序”であることを思い出させる場所
- 陽に飲まれ、身も心も熱くなりすぎたとき、「引き返すこと」を教える
臨床ヒント
- 交感神経緊張型の自律神経失調(不眠・胸苦しさ・早朝覚醒)に極めて有効
- 精神的に“張り詰めて”いる人はこのツボが圧痛反応を示すことが多い
- 特に過食、食後のげっぷ、胸焼けなど「消化器から上に熱が逆流する」タイプに刺鍼することで気の逆流を抑えられる
セルフケア・意識法
- 深呼吸とともに、至陽の部位をそっと押さえると、呼吸が自然と深まりやすい
- 「もう頑張らなくていい」と唱えながら温灸を当てると、心が下に降りてくる
- 陽の勢いに流されすぎているとき、「止まりなさい」というメッセージを届ける場所
補足:精神のバランサーとしての至陽
現代人にありがちな“過度の陽気”(過緊張・過集中・過覚醒)は、知らず知らずのうちに心を蝕む。 そのサインは「背中に熱がこもる」「寝ても休まらない」「呼吸が浅くなる」などの形で現れる。 このようなとき、至陽は心身を“陽から救い出す”ための出口となる。 ゆえにこのツボは、**「立ち止まり、整える力」**を取り戻すための最重要ポイントの一つである。 心が走りすぎたとき、ぜひここに意識を集めてみてほしい。

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